「学ぶ」と「勉強する」の違いをうまく説明できないかなぁと思って考えてみました。
「学ぶ」と「勉強する」の違いを例文で考える
先生:次の文は、「勉強する」と「学ぶ」のどちらも使えますか。
- (私は)アプリで英語を(a. 勉強している b. 学んでいる)。
- 子どもたちは遊ぶことで人間関係を(a. 勉強する b. 学ぶ)。
- 大学は自分が疑問に思ったことを(a. 勉強するところだ b. 学ぶところだ)。
- (私は)昨日は家で(a. 勉強した b. 学んだ)。
- (お母さんが子どもに言います)ゲームばかりしていないで、(a. 勉強しなさい b. 学びなさい)。
- 失敗から(a. 勉強しろ b. 学べ)。
1の「アプリ」、2の「人間関係」、3の「疑問」は、「みんなの日本語」修了段階では未習です。
5の「ゲームばかり」「勉強しなさい、学びなさい」も、「みんなの日本語」修了段階では未習です。「勉強しろ、学べ」は既習です。
答えは
- a.○、b.○
- a.○、b.○
- a.○、b.○
- a.○、b.×
- a.○、b.×
- a.×、b.○
6の「失敗から勉強しろ」は使いにくく(使わないと言い切れない)、「失敗から学べ」のほうがしっくりします。
例文の1,2,3は、現代日本語書き言葉均衡コーパス中納言版を参考にして作りました。
「学ぶ」と「勉強する」の違いを説明する
「勉強する」には「無理をしてがんばる」という意味がある
先生:みなさんは高校生です。テストが近いときに、音楽を聞きたい、でも勉強したということがありましたか。
学生:はい、ありました。
先生:「勉強する」には、「音楽を聞きたい、でも聞かないで勉強する」「無理をしてがんばる」という意味があります。「学ぶ」には「無理をしてがんばる」という意味がありません。
先生:だから、「学ぶ」は、2、3のように無理をしてがんばるという意味がないときによく使います。
この説明は、次の記述をよりどころにしています。
「勉強する」は当面は役に立ちそうもないことを、将来のために無理をして頑張るといったニュアンスがあるのに対して、「学ぶ」は「楽しみながら学ぶ・遊びを通して学ぶ」など、自主的で無理のない感じがする。
類義語使い分け辞典 田忠魁 泉原省二 金相順
「学ぶ」には「まねをする」という意味がある。(だから、一人の勉強には使えない)
先生:4の「昨日は家で勉強した」、5の「ゲームばかりしていないで、勉強しなさい」のとき、この人は一人で勉強しますか。
学生:はい、一人で勉強します。
先生:一人で勉強するときは、「学ぶ」を使えません。
この説明は、次の記述をよりどころにしています。
学ぶ(まなぶ)
明鏡国語辞典 第二版
① 見習って知識・知恵・技術などを身につける。
「自由と平等と友愛の精神をフランス革命 に/から 学ぶ」
「先人の言行から努力の偉大さを学ぶ」
② 教えを受けて知識や技術を習得する。勉強する。
「大学で経済学を学ぶ」
「テレビで中国語を学ぶ」
「独学で作曲を学ぶ」
「熱心に[貪欲に]学ぶ」
③ 経験を通して貴重な知恵を得る。
「体験から教訓を学ぶ」
「下積みの生活 から/に 人生の何たるかを学ぶ」
◆ まねをする意の古語「まねぶ」から出た語。
三省堂スーパー大辞林3.0には、「学ぶ(まなぶ)」は「まねぶ(学ぶ)」と同源とあって、「まねぶ」の意味として次のものを挙げています。
まねぶ(学ぶ)
三省堂スーパー大辞林3.0
「まなぶ(学ぶ)」と同源
①まねする。まねて言う。
「人の言ふらむことを まねぶらむよ/枕草子 41」
②見聞きしたことをそのまま人に語る。
「さまざま まねび尽くしがたし/増鏡 あすか川」
③学問・技芸などを習得する。
「文才をまねぶにも/源氏物語 乙女」
6の「失敗から学べ」の説明は難しい(この例文はやらなくてもいいかも)
先生:6の「失敗から学べ」は、何を学びますか。
学生:これから使えることを学びます。
先生:一人で勉強するときは、「勉強する」です。「学ぶ」は使えません。「失敗」は「教える人」です。一人じゃありません。「学ぶ」が使えます。
先生:「無理をしてがんばる」という意味はありません。
先生:ですから、6は、「学ぶ」を使うことが多いです。